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元史学科による個人的オススメ歴史系漫画13選

元史学科による個人的オススメ歴史系漫画13選

2015.12.20

本を読むことが好きで、ちょくちょく○○月に読んだ本をまとめとして紹介していますが、漫画についてはあまり紹介していませんでした。

そこで、歴史学科卒の自分が勝手に西洋史・東洋史・日本史のジャンルに分けてオススメの歴史系漫画13冊をご紹介!

西洋史好きにオススメの漫画

岩明 均『ヒストリエ』

岩明 均『ヒストリエ』

舞台は紀元前。奴隷の身分にありながら、豊かな教養と観察眼、判断力、そしてそれらを駆使して行動を起こす度胸を兼ね備えた、不思議な青年・エウメネスがいた。あの偉大なる哲学者・アリストテレスの逃亡を助けたりしながら、彼が目指していたのは、「故郷」と呼ぶカルディアの街……。のちにアレキサンダー大王の書記官となるエウメネスの、波乱に満ちた生涯を描いた歴史大作が登場!

『寄生獣』でお馴染みの岩明 均による紀元前4世紀頃の古代オリエントが舞台。
後にアレキサンダー大王の書記官となるエウメネスの幼少期からを創作も交えつつで描いています。

ローマやカルディアとか古代の地中海事情を知らなくても全然楽しめる!
戦争シーンも当然多いのですが、主人公エウメネスの飄々としたキャラクターが良い味出してますが、幼少期の心の葛藤や当時の奴隷制度についても細かく描かれていて、ペラペラとページをめくるだけで壮大な古代の世界へ飛んでいけちゃいます。

ギリシア・ローマ・スパルタ等古代オリエントが好きな人は同じ作者の『ヘウレーカ』もオススメです。

野田 サトル『乙女戦争』

野田 サトル『乙女戦争』

1420年、ボヘミア王国。戦争により家族を虐殺された12歳の少女シャールカは、フス派義勇軍の英雄ヤン・ジシュカに導かれ、仲間たちと共に反カトリックの戦いに身を投じていく。15世紀、中央ヨーロッパで起こり「宗教改革」の端緒となった「フス戦争」をモチーフに、少女の視点で、史実に基づいた凄惨な戦争を描く歴史巨編!!

表紙からして「少女が戦う萌え系の漫画?」と思っていましたが、内容は“凄惨”の一言・・・。
15世紀の中央ヨーロッパを舞台に、カトリック教徒内で異端派とされた急進派である「フス派」vsローマ教皇+神聖ローマ帝国皇帝と言うキリスト教徒同士での血みどろの内乱と言うか戦争をテーマに描いています。

しかも、武器を取って戦う主人公が10代の少年・少女達。飢餓や強姦、戦争捕虜など悲惨な目にあいまくりで命を落としていくのでかなりヘヴィ。
エリート階級である騎士の突撃に対抗するジシュカ率いる農民を中心とするフス派の戦いは、当時としては斬新だったようで戦いの描写は本当に面白いです。

巻末の当時の時代背景を説明している細かい設定資料も読み物として魅力的。

幸村 誠『ヴィンランド・サガ』

幸村 誠『ヴィンランド・サガ』

千年期の終わり頃、あらゆる地に現れ暴虐の限りを尽くした最強の民族、ヴァイキング。そのなかにあってなお、最強と謳われた伝説の戦士が息子をひとり授かった。トルフィンと名づけられた彼は、幼くして戦場を生き場所とし、血煙の彼方に幻の大陸“ヴィンランド”を目指す!! 『プラネテス』の幸村誠が描く最強民族(ヴァイキング)叙事詩、堂々登場!

既に相当いろんなところで紹介をされている『プラネテス』作者の長編歴史漫画です。
舞台は11世紀頃の北ヨーロッパ、当時のヨーロッパ中で暴れまわっていてイングランドまで手に入れたデンマークやノルウェー”ヴァイキング”達。

やはり戦争シーンがメインなので血なまぐさいシーンが多いですが、遠く離れた雪国でのヴァイキングたちの考え方や習慣が魅力的に描かれています。
そして戦いの中で主人公トルフィンが”戦争も奴隷もない理想の王国”を目指していくと言う流れが感動・・・!

まだまだお話は途中ですが、ここまで面白くて大丈夫なのか?と毎回楽しみな漫画の一つ。
上の表紙はもちろんもう一人の主人公アシェラッド。

惣領 冬実, 原 基晶『チューザレ』

惣領 冬実, 原 基晶『チューザレ』

「私の母は娼婦――そして父は怪物だ」15世紀のイタリア、ルネッサンス時代。現代政治学の祖・マキァヴェッリに「理想の君主」とまで謳われながら、歴史の闇に葬られた英雄チェザーレ・ボルジア。争いに向かおうとする不穏な時代に、全ヨーロッパ統一という野望を抱いた男の戦いの物語。本邦未訳『サチェルドーテ版チェーザレ・ボルジア伝』(イタリア語原書)を精査し惣領冬実が描く、華麗なるルネッサンス絵巻!

ルネサンス時代の英雄チューザレを描く一大叙事詩。

時代考証もめちゃくちゃしっかりとやられているようで、さながら壮大なドラマか映画を観ているかのよう。
○○家の○○が対立していて・・・と名前やキャラを把握するのが最初は大変ですが、慣れてくると本当に面白い。
戦争はなく政争がメインとは言え序盤戦は学生時代なので、各キャラクター達の内面がどんどん掘り下げられていき、巻を追うごとに魅力的な登場人物ばかり。

巻末の対談や資料も読み物として本当に面白い!

東洋史(中国)好きにオススメの漫画

森 薫『乙嫁語り』

森 薫『乙嫁語り』

美貌の娘・アミル(20歳)が嫁いだ相手は、若干12歳の少年・カルルク。遊牧民と定住民、8歳の年の差を越えて、ふたりは結ばれるのか……? 『エマ』で19世紀末の英国を活写した森薫の最新作はシルクロードの生活文化。馬の背に乗り弓を構え、悠久の大地に生きるキャラクターたちの物語!

日本人にはなかなか馴染みがないシルクロードの遊牧民たちの生活文化のお話。

自分はこの辺りの歴史には詳しくはないので時代考証がしっかりしているのかはちょっと自信がないけれど、シルクロードに住む人達の、結婚観、ちょっとした争い事、民族的な衣装など、どれもこれも新鮮で楽しめます。

夫婦となった主人公二人を含めてキャラクターが本当に可愛らしい。

原 泰久『キングダム』

原 泰久『キングダム』

時は紀元前――。いまだ一度も統一されたことのない中国大陸は、500年の大戦争時代。苛烈な戦乱の世に生きる少年・信は、自らの腕で天下に名を成すことを目指す!!

アニメ化もされたりと、既に大人気となっているこの作品。

紀元前3-2世紀において史上初めて中華統一を成し遂げた秦の始皇帝、そして秦国において将軍を目指す少年・信が主人公です。
とにかく戦争!政争!と血なまぐさいお話が多いですが、とにかく熱いっ!!

強敵や強国が次から次へと登場し、それらといかに戦場で渡り合って倒していくのかと言う少年漫画の王道のような展開なので、毎巻手に汗握ります。
秦国の中のライバルや既に将軍となっている実力者達も含めて永く楽しめる作品。

とは言えそこまで殺伐とせず、キャラクター同士の掛け合いも癒される。

久保田 千太郎 , 酒見 賢一,森 秀樹『墨攻(ぼっこう)』

久保田 千太郎 , 酒見 賢一,森 秀樹『墨攻(ぼっこう)』

時は二千数百年前、韓・魏・趙・齊・燕・秦・楚の七国が争う戦国時代の中国――。趙の大軍が、燕の小城、梁城を落とそうと、国境の易水川岸に軍を構えていた。梁城では、城を守るため城邑防衛のエキスパート集団、墨家から墨者を呼んだ。しかし、やって来たのは、革離(かくり)という名の男、唯一人だった……!

『キングダム』と同じく7国が覇を競う春秋戦国時代の中国が舞台。
ところが、武将や政治家が主人公ではなく”墨家”と呼ばれる実在した集団のお話です。

“墨家”は孔子が興した”儒家”等と並び、”諸子百家”と呼ばれる学者・学派の総称で、博愛主義を説きながらも独特の思想に基づいて武装防御集団として各地の守城戦で活躍したそうです。

これがめちゃくちゃ面白い!
戦争と言えばどの漫画でも戦場での闘いがメインとなりますが、墨攻では民衆を守る”守城”ばかり。
敵は大軍団であってもそれを撃退する術を持つ主人公革離(かくり)の活躍や市井の民衆たちとの協力など、ちょっと違った視点で戦国時代を楽します。

原作が短編小説ですが映画化もされたりと、一部でコアなファンも多いようです。

日本史好きにオススメの漫画

藤原 カムイ, 寺島 優『雷火』

藤原 カムイ, 寺島 優『雷火』

紀元3世紀頃、倭の国の中心都市「邪馬台国」は、女王・卑弥呼を擁立し、彼女と魏の国より迎えた帯方軍塞曹掾史(いわゆる外交官)・張政を中心とし、新しい時代を迎えつつあった。
そんな折、邪馬台国の近く、熊木山に住む孤児たちの一員で神仙術の使い手、ライカ・オタジ・ウツキたち三羽烏は、ある日山の中で不思議な少女を目にする。少女の名は壱与。邪馬台国次期女王候補の巫女であった。その出会いはライカに強く、国というものの有り方を意識させることになる。その後国に魅せられたライカは邪馬台国へ侵入したが、張政たち魏の人間の策略にはまり、女王卑弥呼殺しの罪を着せられる。卑弥呼を暗殺した張政は魏の権威を利用し、自分に抵抗する力を持たない壱与を女王に即位させることにより、張政自身が邪馬台国を支配、魏の属国にしようと企んでいた。
徐々に明らかになっていく張政の謀略。壱与を中心とした張政とライカ達の戦いは、隣国をも巻き込む戦となっていく。

なかなか珍しい卑紀元前3世紀頃の昔の弥呼が居た邪馬台国が舞台。
『ロトの紋章』等で有名な藤原カムイの代表作の一つとも言えます。

忍術・妖術・新仙術を使ったバトルやキャラクターたちの躍動感溢れ描写など、『NARUTO』等忍術モノが好きな方には是非オススメです。
中国大陸から刺客として送り込まれてくる敵キャラ達も良い味出してますね~。

たかぎ 七彦『アンゴルモア 元寇合戦記』

たかぎ 七彦『アンゴルモア 元寇合戦記』

中世ヨーロッパを席巻し、恐怖の大王=アンゴルモアの語源との説もあるモンゴル軍。1274年、彼らは遂に日本にやって来た!博多への針路に浮かぶ対馬。流人である鎌倉武士・朽井迅三郎は、ここで元軍と対峙する!

こちらもなかなか珍しい、戦国時代ではなく鎌倉時代の元寇についてのお話。

合戦がメインですが、主人公である鎌倉武士の流人の飄々とした正確を含め、各キャラクターが生き生きとしています。
あまり馴染みのない対馬についての描写や流人となった経緯など色々とドラマが詰め込まれていて楽しめます。

圧倒的大多数のモンゴル軍を相手に少数の対馬防衛隊が戦術・戦略を練って撃破していくのは爽快感あり。

井上 雄彦『バカボンド』

井上 雄彦『バカボンド』

強く生きたい!男の名は武蔵。立身出世を夢見る17歳。

武蔵(たけぞう)と又八。
立身出世を夢見る17歳。
勝つか、負けるか。生きるか、死ぬか。

『スラムダンク』で一躍有名になった井上 雄彦の『バカボンド』。
漫画好きの人ならほとんどの方は読まれていると思いますが、宮元武蔵と佐々木小次郎のお話です。

最強の剣豪と謳われた武蔵の過去や佐々木小次郎は、独自の解釈を捉えつつ魅力的に描かれています。
既に著名な作家が何度も取り上げた剣豪のお話をここまで面白く読ませてくれるのは、さすがの一言。

剣術でバサバサ敵を切り倒すと言うより、生と死について考えさせられる深いストーリーです。万人にオススメ出来る作品。

野田 サトル『ゴールデンカムイ』

野田 サトル『ゴールデンカムイ』

『不死身の杉元』日露戦争での鬼神の如き武功から、そう謳われた兵士は、ある目的の為に大金を欲し、かつてゴールドラッシュに沸いた北海道へ足を踏み入れる。そこにはアイヌが隠した莫大な埋蔵金への手掛かりが!? 立ち塞がる圧倒的な大自然と凶悪な死刑囚。そして、アイヌの少女、エゾ狼との出逢い。『黄金を巡る生存競争』開幕ッ!!!!

日露戦争後の北海道が舞台。
極寒の北海道を舞台に色々とストーリーが展開していくのが目新しい。

本作に魅力を加えているのが「アイヌ」についての描写。
あまり現代の日本人には縁がないアイヌの人達の生活スタイルや、狩猟について、美味しそうなアイヌ料理についての描写などなど。

金塊を巡り、日露戦争帰りの主人公、日露戦争で活躍した日本軍の師団員達、戦争犯罪人達、さらには明治維新を生き延びた”あの人達”も登場して熱いエンタメとなっています。

和月 伸宏『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』

和月 伸宏『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』

逆刃刀を腰に下げ、不殺を誓う流浪人・緋村剣心——彼こそは維新志士の中で最強無比の伝説をもつ「人斬り抜刀斎」であった。維新後、その熱き想いで人々を守り続けた流浪人・剣心の活躍を描く!

明治維新後の帝都、京都が舞台。

もはや説明するまでもないくらい大ヒットしてアニメ化・映画化された作品ですが、明治維新という歴史的な背景を取り入れて作品に活かしているので、今読み直しても面白いっ!

主人には必殺技があったり、時には最強と呼ばれながらも挫折したり、妙な武器などを使う適役が出てきたりと、少年漫画の王道的なお話とも言えますが、雰囲気やっぱ良いです。

途中の巻で出てくる剣心の人斬りだった頃の京都のエピソードが一番好き。
このエピソードだけでアニメ化もされていますが、当時の殺伐としていた京都の描き方など素晴らしいのでオススメですよ。

村上 もとか『龍 -RON-』

村上 もとか『龍 -RON-』

押小路男爵家の長男・龍は、武道専門学校校長・内藤の教えに感銘を受け、武道専門学校「武専」に入学することになった。その登校初日の朝、乱暴者たちとケンカをしている龍を見ている男がいた。「武専」で顔合わせを済ませた龍の前に、そのときの男が現われ…。男は部専教授・内藤高治だった。
次第に戦争へと傾斜していく昭和初期の京都を舞台に、ひたすら剣の道を極めんとする男・龍の破天荒な生き方を描く!!

第二次世界大戦前から戦争へ突入していく日本・中国が舞台の漫画。
『JIN-仁』が有名な村上 もとかですが、個人的にはこちらの作品が本当に好きです。

最初は京都での厳しい学生時代を描きつつ、京都・祇園について、財閥でのビジネス、ヒロインとなる”てい”の貧困に喘ぐ東北の話、そして当時の映画業界について、大陸へ渡ってからの中国の描写、抗日ゲリラ達の話、戦争をしていた各国の思惑・・・などなど本当に色々なエピソードが詰め込まれていて、スケールの大きさにくらくらします。

そしてきちんと最終点へ向かってストーリーが完結していくのが素晴らしい。
当時の歴史上の人物や映画監督など実在の人達も多数描写されていますが、どの人物も描かれているような人柄だったのでは?と思うほど魅力に溢れています。

とても長いお話ですが既に完結をしているので、是非年末年始など時間がある時に読んでもらいたいです。

この記事のまとめ

いやぁ、歴史漫画は妄想ができる余地があって本当に面白いですねー。

年表や肖像画、資料、遺構や出土品が多数あっても、結局のところの”その人物はどんな性格でどういう人だったのか?”と言う疑問は同世代に生きた人にしか分かりません。
それこそ漫画家それぞれの解釈と想像によって歴史人物の性格や言動、後世に明暗を分けたと言われるような歴史的イベントの描き方も異なってきます。
「表舞台ではこうだったけれど、裏側では実は・・・」と言った歴史的な”if”を加えつつストーリーが展開をしていく事になるケースが多いので、歴史を少し知っておくだけで更に漫画の世界に魅了されることでしょう。

逆のパターンで漫画でその世界観の虜になってから、歴史を勉強すると言うのも全然アリですよね!
自分もそんな感じで史学科へ入学をして卒業をした口ですので(笑)

もっと色々と紹介したい漫画もあるのですが、まだ最新刊まで辿り着かずに読み途中だったりしたものは今回は敢えて入れていません。
例えば『へうげもの』『軍靴のバルツァー』『狼の口 ヴォルフスムント』『ホークウッド』などなど・・・。

こうしてざっと西洋史・東洋史・日本史でまとめてみると、日本の中世や戦国時代についての漫画を自分はあまり読んでいないなぁ、と気が付きました。

大正、明治、昭和などの今の平成の時代へと続いている方が現在と近いので自分としてはイメージをしやすくすんなりと受け入れられるからかもしれません。

また別の切り口で紹介したい漫画も沢山あるので、折を見てまとめてみますね。
この年末年始で未読の本や漫画をもっと読みたいものです。

漫画

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